日差しはあったが風が強くてまだ手が悴んでいる。スリープにしていたMacbook Proのボディが暖かい。今日の昼、私も話題のクラブハウスのクラブ会員になった。iPhoneのアドレス帳なんてもう何年も触っていなかったので家族以外、一度まっさらにしてもいいのではと思いながら、普段はしないイヤホンをつけて昼食を探しに出た。
私は出勤した帰りの電車内でiPhoneのGarageBandを使って64小節、乗車時間の長い時は128小節、曲を作っているので、イヤホンは音の遅延をなくすため有線で、マイクもついていない。クラブ会員になると同時にAir Pods Proを注文したので次回からは積極的な発話ができると思うが、今日は友人とその友人たちの会話に聞き耳をたて、たまにiPhoneをコートの左ポケットから取り出し相槌を打つような状態。 早咲きの桜が8割ほど咲いていて強い風でもう少し散っているのを撮影している男女数人。川に沿って登っていくとAEONがあるが、まだクラブ会員として発話していないのでAEONはやり過ごし、そのままさらに川を遡上していく。聞こえてきている面識のない声がとぼけてみせる様子に覚えがあって。ああ、終わってしまったラジオ番組の粋な夜電波に出てくる人に似ているな、と思った。6人目の会員が入ってきたころに、坂の上、駅前のパン屋についていた。
iPhoneはポケットの中、マイクはミュートにしてある。パンを3つ選んで、テイクアウトの袋代を払い、ホットのカフェオレを追加注文して店を出るまでの間、6人目が外で弁当を買う声が聞こえてきた。私も共通の苦い経験をさせられた人間と案件の話題が上がった。発話するなら今しかないタイミングを逃した。AirPods Proが届くのは明日。 クラブサンドってなんだっけ。サンドイッチとコロッケパンと溶け固まった砂糖でコーティングされているクロワッサンを買った。
歩いてきた坂を下って、ちょうどAEONを過ぎたところでクラブは解散。イヤホンを外した。海が近い。会社で数回だけ参加した英語の初心者クラスで「少なくとも5単語をつなげて話してみよう」と英語で言われたのを思い出した。「イヤホンを外すと鳶の鳴き声が聞こえてきて、海が近いことを知る。」 港のベンチで5円の赤い袋からパンを取り出した時にはカフェオレはすっかり覚めてしまっていた。MacbookProのボディの方が暖かい。鳶を警戒して壁を背にしたベンチに座って二つ入っているサンドイッチの一つ目、卵サンドを食べていたのだが、3口目で左上に大きな影があるのが見えた。鳶だった。前から来るのか。びくっと体が強張ると同時に、目があった。後ろが壁なので飛び抜けることができず、ゆっくりと近づいてきていたので、目があう時間があった。気づかれたことに気づくと、ずわっと方向転換して去っていった。上がった心拍数の中、周りに人がいなくてよかったと思った。卵サンドを取られたわけでも怪我をしたわけでもないので、嫁と子供にはこの話はしないと思う。