やっぱり、具体的なデザインや機能のディティールも書いておきたい気持ちが高まり。テキストエディタ「stone」の後編です。その仕事をしたときの状況や企画・アイデアを書いた「環境編」を前編。実際のアウトプットについては後編で「制作編」としてみよう。名前は変えるかもしれない。環境と制作。結局、どっちにもあっちもの話を書きそうだが。あと、制作編には実際に作ったものの画像を入れていきたい。なにせ、これはポートフォリオサイトなのだから。
ちなみに、ポートフォリオサイトの実績紹介ではキャプチャを貼るよりも、それを表示しているデバイスの写真を貼る方がいいと思っている。今のところ。それは画面と使ってる人の間にある空間、空気的なものも意識して、デザインしているし、デザインしたものを使っているから。空気を含んだメインビジュアル。みたいなことをデザインセンターにいた頃、部署(オンスク(オンスクリーン制作室))のポートフォリオサイトでも実践していて。文章が残ってますね。2020年7月。でも、ポートフォリオサイトを見てるあなたの目と、画面の間にも空気があるから、空気、ダブってるんだけど。(ダミーヘッドでバイノーラル録音した時に、耳管がダブってるのと一緒。そう2020年の時も思っていた。)
まあ、佇まいが大事。いや、そんな高尚なものじゃないかも。単純な見た目を大事にしている。ただのキャプチャと、デバイスを含めた写真だったら、後者の方が気持ち良い。取っ付きやすい。stoneのデザインに関してもそう。
社内定例でテキストエディタを初めて提案した時、私が作った企画書を見つけた。まだ名前がなくて「NDC製のテキストエディタアプリ for Mac」というタイトル。リードはこう。(蓮見さんに書いてもらったかな、いや、他製品を若干揶揄してるあたり私っぽいので、違うな。)
日本語を美しく表示することに特化した、シンプルなテキストエディタアプリ。 Word などのような高機能さではなく「紙とペン」のような簡素な表情で、書く人の気持ちをサポートします。
続いて、アプリのイメージビジュアルと機能が列挙されていて。機能はこう。
- フォントセットは混植 1 種類のみ(游明朝 +garamond など)
- 段落設定は固定(横書き/両端揃え/禁則処理)
- 検索/置換/コピー&ペースト
- 保存形式:.txt
- 印刷/PDF書き出し
- 用紙サイズの選択(用紙選択時には、改行やページ枠など UI にも変化)
- 行数/文字数カウント
- フルスクリーンモード
なるほど。最終的にリリースされたstoneとの違いは、用紙サイズの選択がなくなったことと、フォントセットが2種類(明朝とゴシック)になったこと、縦書きが入ったことくらい。縦書きは「追って検討します」と企画書に書いてあるが、その場で原さんから入れて欲しいと言われたような気がしてきた。
リッチテキストも検討すると企画書には書いてあったが、最後まで.txt、プレーンテキストのみへの対応にしたのは良い判断だったと思う。フォーマットで機能を制限する。stoneの時もそうだし、今も意識的にやっている。このポートフォリオサイトもCMSを使わず、.md、マークダウンファイルでできることに制限することで出る佇まいがあると思っている。
(マークダウンに対応してアウトライナー的方向性も検討していたよう。今となってはコレも欲しい。そういえば、プレーンテキストのまま##とかの特定記号があった時に見出しとするみたいな拡張も考えたけど、表示がプレーンではないのでやめた。)
stoneに関しては、リリースする前もした後も、「ルビを振りたい」とか「文字の大小を付けたい」とか要望はあったが、文章を書き出すためのアプリとしてあってほしかったので、採用しなかった。それらは文章を書く作業の後半だと思っていて、WordなりInDesignなり、より入稿形式に近いところにあるアプリでやるのがいいという判断。そのせいで世間の期待する機能がなくてクレームも多かったが。リリース時に丁寧な説明ができればよかったという反省はある。(ちなみに、リリース後のカスタマーサポートもなぜか私がやっていて。egword Universal 2を何度オススメしたことか。「stoneを買いたい」と急にオフィスに来てしまった人には、要望を聞いて別アプリをインストールしてあげたり。)
さて、もう少し。ビジュアルの話。最初の企画書に添付していたラフデザインは私が作ったよう。v0。v1というフォルダにはkitamotoとあったので、企画が通ったタイミングで、北本君にパスしたらしい。上の写真。すでにリリース版に近い見た目。さすがグラフィックデザイナー。そして、v2。(バージョン上がるの早い。多分、まだ実装にも回してないのに。)このフォルダで情緒担当の私が、文字色を少しネイビーにしている。これはどこかでもインタビューに答えている気がするけど、インクのイメージ。デザインを紙とペンをモチーフに。プレーンテキストしか扱えない(扱いたくない)ことを強化している。
フォルダ名はそのままv3.xまで進むのだけど、ずっと微調整。必要なインタラクションや、アセットの作成。起動したときのウィンドウサイズを画面サイズから割り出したりなんかしている。とにかく書き出しを気持ちよくしたかったのだ。見た目が大事。
そうやってリリースされたstone。みたいに締めくくる段落を書こうかと思ったが、まだ開発が続いているし(stoneのSlackにはまだ私もいる)、締め括らなくてもいいと思った。リリース後、ダークモードや原稿用紙モードを追加したりしているので、制作編として書けることも残っている。そのうち追記するかもしれないし、しないかもしれない。しないな。多くても、2,000文字くらいで1記事を終えたい気持ちがある。今、2,275字。stoneには文字数カウンタをつけた。とりあえず、少なくとも私は気に入って使っているので、開発が続くといいなと思う。
夕方に書いてしまったので、明日、画面の写真をいくつか撮って記事を公開しよう。