昼ごはんに出ようとした時は晴れ間が見えていたけれど、帰ってくる時にはまた雨が降っていた。近所の牛たん屋(店主は釣り友達)が、仕入れ値の高騰が原因で一時休業。Instagramで知る。水曜日から木曜日は、牛たん屋とは別の店をやっていて。ビールでも飲んで売り上げに貢献しようと、そっちの店のランチに向かう。出たのは12時。もう少し早く出るべきだったと思いながら、ちらりと覗く。案の定、カウンターしかない店内はほぼ満席。カウンターで人と人の間に座るのは好きじゃないので、そのまま店の前を通り過ぎる。
水曜日はあまり店が開いていない。開いてないわけじゃないが、行き慣れた店が開いてない。「空く」と「開く」の使い分けを午前中、Slackでの雑談で間違えたことを思い出す。Tortoiseのライブが立川であるからどうか?という雑談。新しい店に入るよりもパンを買って海へ行こうと思う。こないだもパンを買って海に行ったな、と思い出す。日記用にスマホでメモは取っていたがテキストにしただろうか。パン屋に到着。先客は1人。もう会計済み。前に買ったパンとは違うパンを選ぼう。「ソーセージ入りパン」「野菜グラタン」「キャラメルクリームパン」にする。「野菜グラタン」に「パン」が付いたかどうかは忘れたが、付いてなかった気がする。「グラタンパン」の「タンパン」というリズムを口にした感覚が残っていない。
海に降りられるスロープ。エンジンの音がして、工事車両。侵入禁止か?と思うが、昼休憩。みんな車両の中で昼寝をしている。海に続く階段の中段、砂を払って座る。海沿いを走るパイパスの下にあるので、雨に濡れてない。天気が悪かったせいか、人が少ない。バイパスの柱と柱の間が私の視界。海岸にピンクの服を着た人、海の上は遊漁船と小型船(なんらかの漁)の2隻だけが視界にある。遊漁船は左舷しか見えないが1人しか乗っていなさそう。浜から100mくらいのところに沈めた消波ブロックがあって、遊漁船はその奥、小型船はブロックの上くらいにある。小型船はきっとアオリイカでも獲っているのだろう。
ソーセージ入りパンをかじる。遊漁船の船頭のアナウンスがここまで聞こえる。左手に向かって移動していく。浜にいるピンクの人も同じ方向へ歩いていく。ソーセージ入りパンのパンはロールパンで。バターたっぷりというタイプではなく、素朴な少し乾いた感じのパン。噛むと甘味を感じる。この感じ、昔住んでいた目黒の学芸大学にあったパン屋を思い出した。駅の商店街を終わりまで行った5差路、担々麺屋の左にあったパン屋のロールパン。
ロールパン、いや、ソーセージ入りパンを食べ終えて、野菜グラタンを食べ始めた頃には、小型船もいなくなっていて。視界には人が誰もいなくなった。左右を見渡す。浜の右から人がこちらに向かっている。この時間は長く続かなそうだと思う。野菜グラタン、このパンの部分もさっきのソーセージ入りパンと同じのよう。素朴なパンの上に、ホワイトソースに絡まった色とりどりの野菜がのっているバランス。色とりどり。口にも文字にも最近していないな。右から視界に入ってくるかと思った人たちが、最後のキャラメルクリームパンを食べ終わっても視界に入ってこず。右側のバイパスの柱の向こうを見ると、折り返していたよう。そうか、折り返したか、そう思っていると後ろで自転車のスタンドを起こす音が聞こえて、SALOMONのリュックを背負ったおじさんが右後ろから視界に入ってきた。
空が曇ってきていて、海との境界線がぼんやりしてきた。目を細めたら杉本博司の『海景』みたいに見えるかもしれないと、目を細めたが、そんなことはなかった。立ち上がり、階段を戻り、バイパスの下から抜けると、雨が降っていて。鳩がこぼれたパンを探しに私のいた階段に集まってきた。パンはこぼしてない。