忘れてしまいそうだけれど、勤務先は中央区銀座4丁目にある。いつも通り松屋銀座のデパ地下でタイ料理のお弁当を買い、B1→1F→屋上への直通エレベーターの上ボタンを押したところで、屋上が開放されてないんじゃないか、と今日が平常時ではないことを思い出す。
会計金額がちょっと安い気がしたままクレジットカードを差し出し、屋上にあがり、レジ袋からチャーハンとガイヤーンをメインとしてゆで卵とちょっとした野菜のお弁当を取り出したところで、100円引きの赤と黄色のシールに気づいた。午後2時以降に行くと安くなるのかもしれない。
雨が降っている。湿気と髪を切りに行けていないせいで髪の毛がもっさりしているために、傘をさしていなくても頭皮が水滴を感じにくい。ので、傘をささずに会社から歩いてきたし、屋上の自動販売機で缶のネクターを買う時も傘はさしていない。コットンのトートバッグには茶色で軽い折り畳み傘が入っている。
さすがに席数は制限されていたし、雨のせいで使えないパラソル付きの丸テーブルもあって、空いてる席はひとつだった。目の前にはトマトと名前のわからない花が植えられている花壇なのか菜園なのかがあって、その向こうにはトイレがある。社員通路から出てきてトイレに向かっている人はビニール傘をさしている。 パクチーを避けた箸で、ゆで卵を食べると全く味がしなくてびっくりしたが、ネクターは甘いので単に「味のしないゆで卵」。ネクターを選んだ理由はタイ料理だから何かしら辛いものがあって甘味が欲しくなるとよんでだったが、最後まで何も辛いものがなかった。中身のなくなった弁当箱になって、100円引きのシールが目立つようになった。
食べ終わった後は屋上から階段を歩いて降りることにしている。催事場のスーツ売り場にはスーツをきたスタッフしかいない。その下はリビングフロアで、松屋銀座が運営するギャラリーとショップがあって、うちの会社が関わっている。僕も入社して数年はそのウェブサイトを担当していた。今は別のスタッフが引き継いでいる。
そのギャラリーの前でちょうど担当の人にばったりと会った。名札には責任者と書いてあったので、もう担当ではないのかもしれない。本当にばったりという勢いで話していると、やっぱりリモートワークの話になる。状況を聞かれ。 「全社的に推奨されていて細かいところは部門長判断なのです。そして僕が今は部門長なんです。」 「いつの間にか出世しましたね。」 そう話ししているところで、メンバーズカードについて質問がありそうな女性が彼に声をかけてきたのでサッと別れた。
もう30秒あれば、イメージしていた通り「でも、来月退職するんです。」と、完璧な流れで退職を伝えられたのに、仕方ないので来月メールで伝えることにしよう。