椰子の木の葉の隙間から見える鳶に気を付けろ。目の前にいるカモメが少しお尻を突き出してフンをしたことに気を取られてはいけない。手元のサンドウィッチが狙われている。外で昼食をとるということ。(以下、そとめし)。
このまえこのシェアオフィスに来たときは寒すぎてそとめしを断念してしまったが、今日は朝食のおにぎりを家族で食べているときに妻が「暖かいらしい。」と言っただけあって、確かに暖かい。その発言に対してその時の私はまだそとめしをするつもりがなかったので、「ふうん」とか「そうなんだ」くらいの返事をした気がするが、今ならもう少し温かい返事ができた気がする。 シェアオフィスからすぐそばに海がある。湾。ヨットハーバーがあって、それを眺められるようなベンチがある。そこにパンでも買って持っていけば十分なそとめしになる。ちなみにリモートワークがメインとなってからは殆ど東京のオフィスには行っていない。出社していたころはデパート、「デパート」って今は言わない気がする、百貨店の屋上で、デパ地下で買った弁当を食べていた。デパ地下。百貨店地下。百地下。 シェアオフィスの近くにはパン屋がなさそう。海と反対方向に5分ほど歩いていくとAEONがあるので、まあ誰と食べるわけでも誰に見られるわけでもないので、適当に食料品売り場の手前にあるベーカリーでサンドイッチとジャーマンドックとクイニーアマンを買う。「袋いりますか?」の問いかけに「いります。」と言ったが、ただでさえ通らない声がマスクと保護シートにかき消され、聞き直されることもなくシールを貼られ、決定されたレジの金額のプレッシャーで袋がもらえない。サンドイッチとジャーマンドックとクイニーアマンを手に持って、自動販売機でお茶を買い、海に向かった。
風は弱く山側から吹いているのでそこまで寒くないが上着を脱ぐほど暖かいわけではないので、コートを着たままサンドイッチが入ったプラスチックの容器を開ける。パン、具、パン、具、パンのタイプのサンドイッチで、底辺が8センチほどの三角形に切られて4組入っている。一つ目を食べたところで間違いに気づいた。パン、具、パン、具、パン、ではなく、パン、具、パン、パン、具、パンだった。つまり、パン、具、パンの普通のサンドイッチが重なっていただけで、8組入っていた。一つ目(二つ目まで)損した気分とともに、急に量が増えた気もした。 目の前のヨットハーバーには立派なヨットが10〜20艇くらい停泊しているのだが、その影から貧相なエンジン付きボートが出航した。力強い。 サンドイッチを食べ終わり、ジャーマンドッグを食べているときにだんたんこちらによってくるカモメがいた。観光地だから東京の鳩のように人になれているのだろうか、パンが欲しいのだろうか。あげないけれども。エンジン付きボートが出航してすぐ、川の河口を挟んだ反対側のあたりから観光船が一組の親子を乗せて出船した。出船するのに合わせて周りにいたカモメたちが船に集まりはじめていて、よく見るとスタッフが餌を与えている。集まったカモメの数は親子とスタッフの数よりも多い。いつの間にか目の前にいたカモメもいなくなっていた。クイニーアマンは東京のものに比べて、裏の砂糖の塊の食感がまったくなかった。