退職の挨拶をしようと思っていた職場近くの飲食店はいくつかあって「ほっかい」もその一つ。その閉店を釣り部先輩からのLINEで知った月曜日の正午。素直に悲しい。そして時間帯的には空腹で、この空腹を「ほっかい」に似たような街の中華で埋めるか、全く違う方向性の飯で埋めるか悩んでいる。
硬くて柔らかいパンにすることにした。日差しも強く、丘の上のパン屋まで行くのが面倒くさくて、レジ袋をもらうことができないイオンに入っているベーカリーコーナーにきた。白いトレーにサンドイッチとあんパンとチーズパンをのせたところで、財布を忘れたことに気づく。レジ袋をくださいの一言も通じたことのない私がiPhoneの電子決済の可否を相談できるわけもなく、そっと元の売り場にパンを戻して回る。手指は消毒済み。 丘の上のパン屋はPayPayが使えるので向かった。
「ほっかい」を知ったのは入社して数年後、今から3〜4年前だと思う。誰かに教えてもらったのか、自分で見つけて入ったのかは覚えていない。LINEで閉店を教えてきた先輩にこの店を紹介したのは私。勤続年数では20年近く先輩だと思うが、「こういう中華料理屋を探していたんだ」という反応をもらったのを覚えている。私は週に1回は通っていた。最初の頃は「とりそば」を中心に「チャーシュー麺」などを月に1度くらい挟んでいた。2年前くらいから「とりチャーハン」を中心に据え変えた。蒸し鶏がのったチャーハン、これの大盛り。
私はランチの時間が唯一の読書タイムで、食べながら読んでいる。お店の人(私はあまり名前を聞いたり、覚えてもらったりしようとしない)は家族が中心のようで、夏休みになるとレジの下で子供が遊んでいたり、客席で宿題をやっていたりしていた。 食べ終わり、会計をしているタイミングで豪雨になってしまったときに「もう少し読書していってください」と声を掛けてもらったことを覚えている。注文以外の会話はこれくらいだと思う。 リモートワークが主体になる1年くらい前から、急にランチ時の人が増えて、読書がしたい私は少し足が遠のいていた。それでも時間をずらして月に数回はとりチャーハンを食べていた。
リモートワークになってからは出社自体が月数回。出社してもランチはテイクアウトで松屋銀座の屋上が多かった。「ほっかい」はそのリモートワーク前の混んでいた記憶もあって1度くらいしか行ってないかもしれない。そのときはまだLINEで送られてきた閉店の張り紙も、閉店するという話もなかった。
別に何か最後の会話がしたかった分けではないが、定食メニュー(おかずとご飯の組み合わせ)を一度も注文しなかったことと、夜に一度も行かなかったことは後悔している。子供が宿題をやっていたテーブルがなくなったことも悲しい。SNSもホームページもないだろうから追跡もできない。
残りの数店には少し早めに足を運ぼうと思う。