12時過ぎ。空腹。きのこチャーハンが食べたい。しかし、いつもの町中華はガラス越しにも満席と分かる。分かっていた。そのまま駅の方へ向かって歩く。妻が前から歩いてくる。夕飯のパンを買うついでに昼飯は食べてくると言って先に出ていた。こういう時にどういう顔で近づけばいいのか。昼飯は食べたというので、そのまま別れる。 少し離れた蕎麦屋に行こうかと思ったところで、トイレットペーパーを買い忘れた、駅前で買ってきて欲しいと届くメッセージ。蕎麦ではなく、ネパール料理屋のカジャセットにしようと方向転換。チャーハン、蕎麦、ネパール料理。食べる料理のジャンルは軽やかに方向転換した方がいい。じゃあ、別の店のチャーハンで…なんていうのが一番良くない。 カジャセット、とは。このネパール料理店、9割のランチメニューが北インドカレー(ナンとバターチキンカレーみたいなタイプ)だが、ラミネートされた別紙にネパール料理が4種類だけ。そのうちの1つ。米粒を潰して平らにした乾燥米、おそらく、これを炒めたパリパリライスの周りに、砂肝の炒めたやつや、干し肉の炒めたやつ、ほうれん草の炒めたやつ、ジャガイモの何かなど。カジャは軽食っていう意味らしいから、何でもいいらしい。時間かかりますけど大丈夫ですか、と店員に聞かれるのも4回目。ネパールビール(ネパールアイスビール)も注文。 ハン・ガンの『すべての、白いものたちの』をウエストポーチから出して読む。長いソファに2つテーブルが据えられていて、隣のテーブルに女性客が一人座る。周辺視野に入った雰囲気で友人の東さんにそっくりだな、と思う。服装と靴とカバンの趣味、あと髪が金髪。真横に座っている私から顔は見えない。日替わりカレーの内容を尋ねる声は少し高いか。ハン・ガンをお勧めしてくれたのも東さん。横の東さんも注文を終えると読書を始めた。少し浅く座り直すために服とソファーが擦れる音が聞こえる。
ネパールビールにはパパド(せんべいみたいなやつ)がついてくる。左手で本を持ちながら、右手で半分に割る。ゆっくりと、割れすぎないように。斜向かいの窓際のテーブルには4人の女性客。カセットコンロの話。ナンをおかわりする注文。聞きながら読書。「雪」という文字が目に入って、年明けの車検のタイミングで、オールシーズンのタイヤに変えようと思っていたことを思い出す。そして、今も文章を書いてそのことを思い出す。タイヤに全然興味がない。すり減るなよ。小さな欠片の残ったパパドの皿を避ける。
カジャセットが今日はいつもより遅い。30〜40分待っている気がする。まあ、ビールと本があるからいいけど。むしろ読書を主にしてますから。と思っていると、気を使った店員からサラダがサービスされる。4人組のテーブルはおかわりナンの量が多くて持ち帰り。ラッシーの入った銅のコップと、カレーの銀色の皿が4組残されたテーブル。窓からいい光が差してくる。写真撮ろうかな。光はそう悩んだ短い時間だけ差して、すぐ陰った。